2021.10.20

2度の離職とブランクを経て、 もう一度踏み出した再スタートへの一歩 29歳/専門卒/ミユキ

今年の9月からテストエンジニアに再就職が決まったミユキさん。
ミユキさんはデザインの専門学校を卒業後、デザイナーとして就職したものの、精神的な疲労から2年で退職。
その後、悩みながらも決めて転職した先は契約内容と全く違う仕事内容で、1ヶ月で退職となりました。

途方に暮れ、数年のブランクが経過し、頭に不安がよぎりながらも、「もう一度働きたい」と思い、再び就職活動を進めました。
再就職をし、働き始めるまでの心境の変化を当時の思いを振り返りながら、お話しいただきました。

目次

  1. ①絵を描くのが好きだった幼少期
  2.  ▷幼少期の出来事からデザイナーを目指す
  3. ②新社会人、抱え込んでいた期待とプレッシャー
  4.  ▷「期待している」という言葉とともに増えていく仕事量
  5. ③早期退職と失った社会への信頼
  6.  ▷入社2ヶ月での退職と、1年半のブランク
  7. ④再び始めた就職活動とステップ就職との出会い
  8.  ▷相談をしたことで悩みも軽くなる
  9. ⑤「可能性を育む」会社からのスカウトと踏み出した一歩
  10.  ▷経歴ではなく経験を見てくれる会社からのスカウト
  11. ⑥面接当日から「内定」の瞬間まで
  12.  ▷良いことも厳しいことも成長のために伝えてくれる会社との出会い
  13. ⑦入社後、一歩一歩前へと進んでいく
  14.  ▷研修を終えて、見えてきた目標

絵を描くのが好きだった幼少期


私は小さい頃、よく友達の話を聞くのが好きだった。
テレビ番組やテストの結果など、様々話を聞いては楽しんでいた。
友達と遊びに行くこともあったが、一人でノートに絵を描いて過ごしていたりもした。

中学、高校ともに仲の良かった友達と、一緒に漫画を描いていたことでイラストやデザインにも興味を持つようになり、高校卒後はデザインの専門学校に進学した。

専門学校では、デザインの基礎知識に加えて、実際に商品を販売することを想定して学生同士でグループをつくり広告の作成なども行っていた。

私は、グループの中では計画を管理したり、他の人の仕事の手伝いをしたりと、裏方のような役回りも多く、頼られることも何かと多かった。
時にはグループのメンバーが何もしてくれない時もあったけど、そんな時も一人で準備をしてなんとか発表に間に合わせたこともあった。

このような専門学校の生活を送ったあと、就職活動では無事にデザイナーとして印刷会社に就職した。

新社会人、抱え込んでいた期待とプレッシャー


念願だったデザイナーとしての社会人生活がはじまった。
新人ということで、最初はパンフレットやカタログといった広告の作成業務を行っていた。
好きで始めた仕事だったので、最初はひたすらに頑張った。
入社してまもなく深夜遅くに帰宅する日もあった。疲れて、休みの日はずっと眠り続けることもあった。
「これが社会人か」と思った。
でも、自分でやろうと決めた仕事だったので「やり切ろう」と思い、仕事に取り組んでいった。

すると、最初はデザインの作成業務だけだったのが、徐々に企画などの仕事も任されるようになっていった。とても嬉しく、「もっと頑張ろう」と思えた。

一年が経過した時には睡眠を削る日々も続いていた。「期待している」という言葉の数と共に仕事の量も比例して増えていった。


私も「周りの想いに応えなければ」と思い必死に働いていた。
しかし2年経った頃、徐々に体調不良の日が増えてきた。
朝起きれない日や休日ずっと寝てしまう日も増えていった。

そんな時、「本当にやりたかった仕事なのか」という一言が頭によぎった。
自分が精神をすり減らしていることにようやく気づいた。

  ちょうど同じタイミングで身内が病気になった。
介護が必要になりそうとのことで、もしそうなると一緒に住んでいる私が介護をすることになる。
「今の生活では介護はできない」と思って、退職を決めた。

早期退職と失った社会への信頼


その後は介護と両立をしながら働ける場所を探していたところ、「※インフラエンジニア」というITの仕事を見つけた。
※インフラエンジニア・・・通信回線やネットワークといったITにとってなくてはならない基礎を構築・整備・維持する仕事

未経験なので不安だったものの、面接を受けた時には、「研修が1ヶ月しっかりあり、勤務時間もあなたの都合に合わせられるので安心してください」と話をしてくれたことで、「この会社ならば安心して長く働ける」と感じて入社を決めた。

しかしいざ入社すると、研修は全くなくいきなり実務がスタートした。
右も左も全くわからない状況が続いた。思わずパニックになることもあった。

通勤時間も1時間半を越えていて、聞いていた話と全く違い、驚きを隠せなかった。
「とてもじゃないが介護をしながらでは働けない」と感じ、短すぎるとは思いつつも1ヶ月で辞めた。


長く働き続けようと思い転職した会社を短期間で辞めることになり、「自分が社会に合わないのではないか」とも思い、考え込む日々が続いていった。

周りの友人や知人を見ると、順調にデザイナーの仕事をしている人や、夢を諦めずに追いかけ続けている人、転職して働いている人、結婚している人など、みんなそれぞれ先へ進んでいた。
いつの間にか自分だけ取り残されている気持ちになっていた。

そんな中でも「何かしなければ」と思い、介護の合間をぬって漫画家を目指している友人のアシスタントとして作品作りの手伝いに行ったりして過ごしていた。


このような生活を1年半ほど送ったあと、身内の方の容態も良くなり、次第に自分の時間も増えて心に余裕もできた。
このままの生活を送るよりは、「もっと家族のことも支えていくためにも仕事をしなければ」と思った。

正直、「また続かなかったらどうしよう」という思いが何度も頭をよぎった。
でも「これが最後のチャンスかもしれない」とも思い、まずは話を聞こうと、動きはじめた。

ステップ就職との出会いと再び始まった就職活動

以前働いてからずいぶんブランクも空いてしまったので、「本当に自分が働ける会社はあるのか」と不安を感じつつ、まずは情報収集のためにいくつかのエージェントに登録した。
その中の一つがステップ就職だった。

ステップ就職を選んだ理由は事前にお試しで働ける機会や説明会に参加できるからだった。
次に就職する会社は「長く働きたい、失敗したくない」という思いも強かったので、先に会社を知ることができるのは良いと思った。

ステップ就職に登録すると、「会社を紹介する前に、まずは状況を詳しく知りたいので、話しましょう」と言われた。

私も「いろんな情報をもらおう」と考えていたので、対面で話すことを希望して直接話を聞きにいった。
他のエージェントでも最初に話をする会社はあったので、念の為以前作成した履歴書や職務経歴書などの書類を持参した。


当日は仕事のことなどを聞かれるかとも思い、少し緊張してオフィスに向かった。
しかし実際に話がはじまると、内容は「希望職種」や「資格」のような話よりは、学生の頃は友達を絵を描いたりするのが好きだったという話など、どちらかといえば、感情的な部分を中心に質問を受けた。
今まで相談していた時は経歴のみを聞かれていたので、少し驚きはしたものの、学生時代や働いていた時に「楽しい」と思ったことや「大変」に感じたことを一つ一つ話していった。
スタッフは若い方だったけど繰り返し質問をして聞いてくれたのを覚えている。

気づいたら2時間半ほど話していた。
その日は履歴書はほとんど使わずに終わり、「この話が果たして仕事に繋がるのか」、「このスピード感で大丈夫か」という不安は残っていたものの、長い時間話を聞いてもらえ、普段相談出来なかった話もできたので、少しだけ不安が解消された気がした。


これまでは、次こそは長く働きたいけど、二度の離職から「本当に大丈夫なのか」「自分は働いていけるのか」と、漠然とした不安だけがあった。
ただ、不安だからこそ、自分を改めて見つめ直せる機会にもできると思えるようにもなれた。

「可能性を育む」会社からのスカウトと踏み出した一歩


次は一週間後に、会社を紹介してもらうためにもう一度ステップ就職に足を運んだ。
するとスタッフから、「会社からスカウトが届いた」との話があった。
ステップ就職では、個人名や住所などは隠し、特定されない状態にした上で会社に「このような経験を持つ方がいます」と提案する「スカウト」という制度があるとのことだった。

スカウトをいただいた会社はIT企業で、前職もIT企業だったので不安は大きかった。
しかし、スカウトをいただいたIT企業は「学歴や年齢に関係なく、誰もが輝けるように」という考え方で、ステップ就職からも、19歳から34歳まで幅広い人が未経験から就職しているとも聞き、何より「経歴」ではなく、「経験」を読んでくれる点に惹かれて、私も「新たなスタートができるかもしれない」と考えて、スカウトがきた会社を受けることにした。

その会社では説明会と面接が同時にあったので、不安はありつつも、説明会で合わないと思ったら「面接を受けなくても大丈夫」とも言われていたので、会社の訪問に向けて書類の準備に取りかかった。

書類の準備では昔作成した書類をもとに、その会社に向けて志望動機と自己PRの作成を中心に行った。


志望動機は「私が会社を選ぶ理由」になるので、会社のことを調べることから始めた。
一度も行ったことのない会社なので、同じ業種の他の会社との違いを調べたり、ステップ就職のスタッフにどんな人が働いているのかを聞いていった。

すると仕事内容が同じでも、得意な分野が違っていたりと、理解も深まっていき、会社の良いと思える点も見つけていった。

次に自己PRは「会社が私を選ぶ理由」になるので、「会社の求める人物像」を考えた。
求める人物像は様々な項目が思い浮かんだが、最終的には、ITは常に新しくなるので、「継続力のある人」が求められると思い、学生時代の話をもとに継続力のエピソードを作成した。

一人で作成するとなると大変だったかもしれないが、確認して修正してもらえたので二週間ほどで作成ができた。

面接当日から「内定」の瞬間まで

当日の緊張は今でも鮮明に覚えている。
会社に入ると、男性の方が面接をしてくださった。
はじめに会社の説明を一通り受けた。会社の考え方や、実際に働いている人のエピソードも聞くことができ、良い印象だったので、そのまま面接に進んだ。

面接がはじまると、志望動機や自己PRという直接的な質問はなく、履歴書をもとにこれまでの経験を一つ一つ聞かれていった。
思ったことを率直にお話ししてくださいと言われていたので、「その時の自分の言葉」で答えるようにした。

人事の方は一つ一つ丁寧に、真剣な眼差しで私の話を聞いてくれた。
そして前職を辞めた理由を聞かれた際には、「逃げているようにも聞こえる」という厳しい言葉もあり、思わず発言に詰まってしまう場面もあった。
でも「その通りだ」と思った。そして、それを認めた上で「これから頑張っていきたいです」と伝えた。

面接という機会にも関わらず「この人は厳しい言葉まで投げかけて、わたしの成長を本気で考えてくれている」と思った。
面接が終わった後は少し安心したものの、熱意を伝えられた自信は正直なかった。


その後、一週間ほどでステップ就職のスタッフから結果が届いたとの連絡があった。
結果は期待していなかったので、電話で「内定」という言葉を聞いた時は驚いた。
「ほんとうに?」という気持ちで最初は信じられなかった。

でも、あの時の「頑張っていきたい」という言葉を評価してくれたと聞き、後からとても嬉しくなった。
未経験からでも新しく始められるというのはもちろん大きいけれど、何より面接から、良いことも厳しいこともしっかり伝えてくれる人事の方が印象的でこの人の元で働きたいと思えた。

そのあとは他社のエージェントで受けていた会社の面接も辞退し、正式に内定を承諾した。

思えば最初にステップ就職に相談した際は「次につながるのか」と不安に感じていたものの、気づくと一番はじめに内定が出たのはステップ就職を通して受けた会社だった。

ステップ就職を選んで本当に良かったと思えた。

入社後、一歩一歩前へと進んでいく


不安とやる気の両方の思いを持ち合わせた状態で向かった入社初日。
まずは1ヶ月間のお試しで働く期間からのスタート。
最初の数日は緊張もあり、はじめてということもありでなかなか気を緩めることができなかった。
未経験ということもあり、周りに比べて仕事ができないことに不安を感じて、「やはり向いていないのでは」とも思った。

でも、会社の方は「焦らなくても大丈夫。できることを積み重ねてほしい」との話をしてくれて、わからないことは全て丁寧に回答もしてもらえて、不安は徐々に消えていった。
二週間経つ頃にはだんだんと研修にも、会社の雰囲気にも慣れていって通うことが楽しくなっていった。


そして、入社してから三週間後、定期フォローの一環として、ステップ就職のスタッフと会社の方と私とで、働いてみた感想を話す機会があった。

「自分のことを評価するならば何点くらいになりますか?」という質問があり、私としては「まだまだ足りない」と思っていたので「自己評価としては40点ほど。もっとがんばりたいです」と伝えた。

すると、会社の方からは「今のミユキさんは100点。これからも一緒に働いてほしい」との言葉と日々の同期の方への気遣いやメールの文面など良い点を伝えてもらった。

普段働いていて、自分の印象を聞く機会もあまりなかったので、「ここまで見てもらっていたのか」と思い、とても驚いた。
そして、「良い意味で期待をしないので、伸び伸びと思い詰めず働いてほしい」と話をしてくれた。

「良い意味で期待をしていない」という言葉が印象的だった。
今まではどちらかといえば「期待している」という言葉をもらうこともあった。
でも、だからこそ「期待していない」という言葉は自然と安心できた。これから頑張っていこうと思えた。

今は、お試しで働く期間も終えて、正式に働き始めている。
これからは、まずは一通り自分で基本的な業務ができるようになりたい。
そのためにもわからないことは積極的に質問し、できることを少しずつでも増やしていきたい。

そして、いつかは私のような全く何もわからない方にも、今度は自分が教えられるようになれれば、と思っている。


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